或るギラサポの回想録

本城陸上競技場ゴール裏に通っていたギラヴァンツ北九州サポーターのつぶやき

【後編】ゴール裏をめぐるその後と今の思い、そして「ぶちくらせ」問題について

さて、ここからは後編となります。


前編をお読み頂いた方の中には、「アニオタが追い出された私怨を書いているのか」と思われる方も居られるかもしれません。また、「なんでそんな前の話を今頃」と言われるかもしれません。

ですが、私がいま、このタイミングで一連の問題について改めて筆を起こそうと思い至ったのは、現在ギラヴァンツ北九州を揺るがしている所謂「ぶちくらせ」問題、各所を巻き込んで複雑極まりない状態となっているこの騒動の根幹を紐解くうえで重要な観点の一つが、アニメゲーフラ追放に絡む一連の流れにあると考えているからです。

前編の冒頭でも書いたように、アニメゲーフラ追放以前の本城ゴール裏コアゾーンは、様々な趣味嗜好の方が自由に集まって応援できる、多様性に満ちた空間でした。そのような雰囲気の中では、何か問題があればそれに対して自由に意見も言うことができましたし、それが活かされていたと思います。
ですが、前述のアニメゲーフラ排除にまつわる一連の問題は、結果としてそれらの多様性をも排除することに繋がったと考えています。

多様性を排除し、異論に対して耳を貸さず恫喝で封殺した結果が行き付く先は、どのような集団であれ変わりありません。

先鋭化と過激化、その二つです。


染岡氏の志向もあったのでしょうが、それを止める者も居ない中で、結果としてゴール裏の応援スタイルは過激な方向にシフトすることとなります。
暴力的なチャントや対戦相手へのリスペクトに欠けるコールが増え、ダービーの入り待ちの際の乱闘騒ぎなど、大きな問題も発生し、それらが度々問題視されるようになりました。しかしその指摘の声に対し、彼等は「文句を言うなら直接ゴール裏に来い。現場に来ない奴の意見は聞かない」と聞く耳を持とうとはしませんでした。

事態は改善どころか悪化する一方で、ゴール裏から離れる人も増えるようになりました。ゴール裏以外の席でも、「あの応援はちょっと…」という声が強くなり、それがスタジアムを離れている私の耳にもよく入るようになりました。
悪評ほど広まるのは早いとは言いますが、普段スタジアムに足を運ばないような方からも、「ギラヴァンツって興味はあるけど応援の雰囲気が悪いんでしょ?」と言われるようになりました。


その延長線上で発生したのが、今起こっている「ぶちくらせ」騒動なのだと私は考えています。


「ぶちくらせ」という言葉自体については、普段の社会生活の中ではまず使われない言葉です。どちらかといえば喧嘩や脅迫など、暴力を伴うような状況で使われる言葉だという印象を持っています。使用される状況を勘案するならば、公序良俗に抵触する言葉と判断することも出来ます。
北九州市が「応援には相応しくない言葉」として使用停止を要請し、クラブがそれに応じたのも、北九州市における暴力追放運動や「修羅の国」と言われる悪いイメージの向上という地域独自の事情、そして市民クラブとしてギラヴァンツが市より受けている数々の支援を考えれば、個人的には禁止決定は仕方ないのではないかと思います。
少なくとも今回クラブは根拠を明確にした上で使用禁止の判断を発表しておりますし、クラブには主催者としてその権限があります。
「地元の方言だから使っていいじゃないか」と仰る方は、夜の小倉の繁華街などで道行く人を捕まえて「きさん、ぶちくらすぞ!」と言って頂ければ言葉の意味を文字通り身をもって理解できるかと思います。(その場合の身の安全は保障できかねますが)

ただ、この言葉をスタジアムで使うことの是非については、私は正直な話、「グレーゾーン」であったと思っています。
私は2011年以降しか知りませんが、当時のゴール裏では、「ぶちくらせ」を使う頻度は少なく、限られた状況で使われていた言葉でした。一番使われていたシーンは、試合勝利時にランバダの曲に合わせて「ぶーちくらせーラララララララララー」と歌うものでした。勝利の喜びを最大限に表すとともに一種のガス抜きも兼ねた意味合いがあったように思えます。

「ぶちくらせ」が問題であるという話は、その頃にはまだ殆ど出ていなかったと記憶していますが、その理由としては、
・「ぶちくらせ」を使うシーンが少なく、かつ限られていること
・応援団の統制が取れており、一定以上の過激なチャントや行動が抑えられていたこと
の2つではなかったかと個人的には考えています。

染岡氏がコールリードを主導するようになって以降、過激な言葉のチャントが目に見えて増えるようになりましたが、その中でも、「ぶちくらせ」が使われる頻度は以前とは比較にならない程多くなりました。
「ぶちくらせ」を北九州の応援のシンボルとしたい考えがあったのかもしれませんが、結果的には彼等の問題行動とも相まって、ゴール裏のイメージ悪化を促進させることになりました。その結果として、「ぶちくらせ」の言葉はいっそうクローズアップされ、市民の間からも問題視する声が増え、市議会での問題提起や朝日新聞の記事などに繋がったのだと思います。

ネットでの反応を見ると、時折「ぶちくらせは朝日新聞が焚き付けた言葉狩りだ」という反応をされている方を目にします。
ですが、上記のような経緯を辿った上で記事となっているのであり、朝日新聞の記事は「ぶちくらせ」問題の「原因」というよりは、一連のゴール裏集団の問題が行き付いた先に生まれた「結果」なのだと私は考えています。
そういう意味合いにおいて、「ぶちくらせ」という言葉は、結果として一連の問題の象徴として不幸な扱われ方をしてしまったのではないかと思っています。元々は問題視されず、クラブも公式サイトなどで使っていた言葉なのですから。
この言葉を微妙なグレーゾーンから引っ張り出し、行政の要請の元で白黒付けざるを得ない状況に追い込んでしまった原因は、クラブではなくコア集団の行動にこそあると私は考えています。

そしてこの問題に関心を持たれる他クラブのサポーターの中で、「ぶちくらせがダメならうちの○○もダメなんじゃないか」という疑問や危惧の声も目にしておりますが、今回の「ぶちくらせ」はあくまでギラヴァンツ北九州北九州市の問題です。他所のクラブのコールの是非についてはそのクラブとサポーターと地域の方がそれぞれ考えれば良いことだと私は考えています。

少なくとも、新聞記事とクラブ側からの自粛要請の段階でゴール裏集団が適切な状況判断を行い方針転換をしていたならば、現状はまだ違ったものとなっていたと思いますが、結果は見ての通りです。
記事を揶揄するかのようにプチグラッセを配り、彼等が内輪で盛り上がっている間に事態は決定的に彼等に不利な状況へと推移していきました。
個人的にはあの時点でのあの対応が、市やクラブをして禁止方針を固めさせる要因となったと考えています。どう考えてもあれは悪手でした。
それを集客団体でありYELLOW BRIGADEとは別組織を謳う本満会も一緒になってブログで取り上げるあたりが、彼等の危機意識の無さを如実に表しています。
先日のホームゲームでは、遂にマッチデースポンサー様の挨拶の最中に「ぶちくらせ」コールを繰り広げる大失態まで犯しています。それも確信犯的に。誰か諫める人が、あの中にはもう残っていなかったのでしょうか。先鋭化が行き付いた末の、まさしく自滅とも言える醜態でした。

場面ごとの状況を見て適切に判断し、チームを応援で鼓舞していくこと、それがゴール裏の応援組織に求められる最大の役目ではないでしょうか。
その観点において、自己の面子のみを優先して醜態を晒し続ける現在のYELLOW BRIGADEは既にその存在意義を失ってしまったと私は考えています。本満会もまた、主要構成メンバーがほぼ同一であるだけでなくYELLOW BRIGADEの主張と軌を一にすることで、同様に責任を問われる状況にあると言えます。

これまで彼等が懸命にホームでの応援や遠方へのアウェイ参戦、そしてポスティング活動などを展開してきたことの功績については認めますし、その行動そのものに対しては敬意を抱いております。

ですが、この問題は既に各種メディアで取り上げられ、市長もコメントを公式に表明するまでの事態になっております。
「チームを愛しているから」「一生懸命やっているのだから」で事が済まされるような事態はとうに過ぎているのではないでしょうか。

もちろん、クラブ当局にも多くの問題はあります。
運営上の問題もこれまで多々指摘されておりますし、彼等コア集団に対してこれまで事なかれ主義で対応した結果が、現状を生んでいる一因でもあると考えます。

ですが、今回の一連の問題についてまず責任を問われなければならないのは、染岡氏率いるYELLOW BRIGADEであり、本満会であり、その同調者たちです。

クラブに対しては、今度こそ彼等に対する判断を誤ることなく、毅然とした対応で「安全なスタジアム環境」をまず取り戻して欲しいと願っています。それこそが今回の騒動で失った各方面からの信頼を回復する唯一の方法ではないでしょうか。

YELLOW BRIGADEは今度「サポーターミーティング」を開催するそうですが、彼等がこれまでの行為を反省し、虚心坦懐に批判の声に耳を傾ける姿勢を持っていなければ、折角のミーティングも単なる自己主張と憐憫の場にしかならないでしょう。私は残念ながら参加できませんが、そこでどういう話が展開されるのか、そして彼等がそれにどう応えるのかは今後の情勢を考える上で一つの参考となるかもしれません。現在の事態を彼等が打開するには既に何もかもが遅きに失していると思いますが。

以上で、この文章を終えたいと思います。

長い文章となりましたが、ここまでお付き合い頂いた方には本当にありがとうございました。乱文乱筆の段は平にご容赦ください。

このような状況ではありますが、
これからもも私はギラヴァンツ北九州を応援していきたいと考えています。

それがどのような形となるかはまだ分かりませんが、自分にできるやり方で。


志を同じうする仲間と共に。